小さな頃に

誰でも“小さい”頃があった。

小さな手、小さな足、小さな頭、目、耳、爪、鼻、その全てて、ただひたすらその生まれたての感覚だけを使って、この世界を味わうそんな時代があった思う。

 

お昼寝の時の風、冬の朝に感じる寒さ、トラックの音、朝の鳥のさえずり、猫の鳴き声、ご飯を作る音、炊き上がるごはんの匂い、家族が話す声、玄関が開く音、階段を駆け上がる音と振動、果物を切った時の甘い香り、毛布の手触り。

 

挙げればきりがない、その五感で感じる体験を、大人になって思い出す時、嬉しいものであるように、それが幸せを感じる記憶であるように、大切に渡してあげることができたらいい。

 

もう大きくなった人が、小さい頃を生きている人へ、何ができるか、どんな世界を見せてどんな世界を体験させてあげられるか、それはとても大切に考えたいこと。

 

記憶の家での暮らしの中で、本物の音、本物の触感、本物の道具を通して、

「本物」を知り「文化」を伝えること。

 

1階の大きな窓には障子がはめ込まれます。

建具屋さんが作ってくれる大きな障子枠に毎年、年の瀬に家族みんなで張り替え、そして新しい年を迎える。

 

例えば、美しく貼るために貼りたての障子に霧吹きをかけるとピンっと伸びる、ということを知ることなんかは体験の中で蓄積されていきます。

 

扉を閉じたまま採光できることや、断熱や通気性といった日本の暮らしの工夫や知恵の証も、使ってみないとわからない機能の部分です。

 

剥がした紙が湿気を吸い少し日に焼けあせた色に、経過した時間を想う。

毎年変わらず行われる「障子の張り替え」という家族の行事は、大切な記憶の風景となって、引き継がれていきます。