手のひらが覚えている

手ざわりがいいものに触れていると嬉しくて元気になる。

手のひらは体の中で様々なものに一番触れる部分なのかなと思ったら、

大切にできているだろうかと考える。

 

生まれたての赤ん坊は

誕生してはじめてこの世界の空気に触れ人の体温に安堵感を覚える。

布団のシーツの感触にも、

目や耳の形、足の指、手の指、まずは自分のからだに触れてかたちを知る。

抱きかかえてくれる人が着ている服の質感。

沐浴の心地よい温度。

 

少し大きくなって、その手のひらで

小さな虫の命の動きを感じ

雪の温度、湿った土の温度、雨の雫、海の潮風、山の肌、生きる環境全てに触れていく。

 

ずいぶん大人になって、変わらずその手のひらで

かばんの重み、

新しい家族の小さな命の重み、

 

そして、

人生の最後には、家族の手を握るのかもしれない。

 

年をとった人のシワの手がなんだか愛しくかっこいいなと思うのは

そこに重ねてきた二度と戻れない日々の記憶が

シワとなって写しとられているから。

 

手のひらはくらしのセンサー。

 

手のひらにどんな記憶を残してあげようか、と思うと、必然とどんなものに囲まれて暮らすか、を考えることになって、その果てに、家族に触れさせたいものが何か、もちゃんと考えて選ぶようになる。

手のひらはきっとたくさんのことを覚えている。

脳では思い出さないことを、手で触れると思い出すことがある。

思い出すことが前向きなことばかりではないけれど、

手のひらの感覚を育ててあげよう。

手のひらの感覚、どう感じるかを大切にしてみよう。

 

記憶の家で触れるものは全て手のひらの感覚を育ててくれます。

鉄・羊毛・石・土・麻・木。

私たちの祖先からずっと変わらずに使い続けてきた素材。

 

2階の部屋にはリネンのカーテンを。

リネンのカーテンはきっと私の手のひらも、家族の手のひらも、みんなの手のひらが喜んでくれると思う。

 

リネンは草からできていて、カーテンになるずっとずっと前は土の中で命を育み、

 

カーテンは、

朝あけて、夜閉じる。

毎日、あけて、とじる、が繰り返されて

触れるたびに跡がつく。

 

手のひらが感じたことは、カーテンのくせとなって日々の形跡を見せてくれる。

 

30年後のリネンカーテン は、草原に揺れる草花のように

柔らかくしなやかで、それでいてその芯の強さの意味を住人に教えてくれます。

光で育てる、手のひらで育てる、植物のリネンカーテン 

 

暮らし方は、喜ばせ方。

自分も、家族も、からだの芯から手のひらの表面まで、

しっかり大切にしてあげよう。